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2014年04月19日

天然鰻図鑑

天然鰻と一口に言いましても、様々な種類が存在します。
と言っても、学術上の種類ではなく、個体差による呼び名の違いで、ここでは築地市場や鰻料理の世界で用いられる呼び名と、その個体の特徴や生息域などを記すことにします。
ここでは主にニホンウナギについて書きますが、先ずはご参考までに天然物と養殖物の色の違いをご覧ください。

画像は上の1本のみが天然で、下の2本は養殖です。
色が違うことに気づかれたと思いますが、この天然はいわゆる「アオ」と呼ばれる物で、養殖は青みがかった灰色をしています。
※以下の文章や画像は、「うな研」のサイト内から引用したもので構成します。
日本産の天然うなぎの種類は、現在の分類上はニホンウナギとオオウナギの2種類と放流によるヨーロッパウナギが確認されています。
しかし、分類上は一種類のニホンウナギでも捕れる場所や餌によって様々に変化した個体がいます。

昭和初期までは、うなぎ問屋に入荷する天然うなぎは何十種類にも分けられ値段を付けていたそうです。
今では、無くなってしまったその種類や呼び名を、希少とは言えまだ確認できるうちに復活させて、後世へと伝えて行きたいと考えています。


《色による区別》
「アオ」 ☆☆☆~☆☆☆☆☆
「アオ」と言っても昔の「アオ」と言う表現は主に写真のような草色の事です。
現在はほとんど見かけなくなった「備前青江のアオ」は、本などで「黒緑」と紹介されていますが、地元の漁師さんによるとブルー系統のアオだそうです。
古来より備前漁師の間では、アオの上に位置するギラと呼ばれる特上のうなぎがいたらしいのですが、現在は絶滅してしまったと思われます。


「クロ」 ☆~☆☆☆
釣り対象として、最もよく見かけるうなぎかも知れません。
背中が「黒色」のウナギですが、季節や場所によって味覚も大きく変化します。


「カラス」「腹クロ」☆~☆☆☆
ハラクロ天然うなぎ
大半が居着きで、腹側の白色がほとんど目立たないうなぎです。
皮が異常に硬い為に二~三流品とされていました。

しかし、例外として
オカ黒の中でも真冬の寒の時期に、冬眠中の泥の中から掘り起こす「寒の天然」もこの黒に属しますが極上の天然うなぎです。
ウナギの旬は「秋・晩秋」と言われているのは「下りウナギ」の脂がのっている為です。
実を言うと寒の天然うなぎは、その「下りウナギ」よりも評価の高く、この天然うなぎが普通に流通している頃は、鰻の旬は10月下旬の「下りウナギ」にはじまり、泥の中から掘り起こされる「寒の天然うなぎ」が最高とされていました。
ですから「冬」がもっともウナギが美味しい時期とさえ言われていました。

寒の天然鰻 ☆☆☆☆☆


「アカ」 「チャ」 ☆☆~☆☆☆
天然うなぎ茶 天然うなぎ黄    
岡山産 流れの速い河川に多く、背が黄赤色のウナギです。


「ゴマ」 ☆と☆☆☆☆
上流域に多く、背が黄色と茶色系で胡麻を振ったように黒い点があるウナギで三流以下(四等品)とされていたそうです。 しかし、この上流域に棲む皮の異常に硬く脂が無い物の他に、河口から海で捕れるゴマウナギは最高級とされていたそうです。
また、松井魁先生は「オオウナギの幼魚」ではないのかと書かれていますので、ひと口に「ゴマ」と言っても何種類かのウナギがいたようです。  
天然うなぎホクロ

写真のウナギはゴマの模様が出ていますがゴマウナギではないです。「ホクロ」と呼ばれていますが、ホクロは無視して他の特徴を優先させて選別されました。
上流に住む方のゴマウナギはもっと腹が黄色くゴマの模様もハッキリと現れています。
オオウナギの幼魚でもありません。              

「シロ」☆☆☆~☆☆☆☆☆
砂質のせいだと言われています。色の薄いアオ系でグレーがかったうなぎだと考えております。
<シロ?> 「アルビノ」の白や黄色とは別だそうです。


「ホシ」「カスリ」 ☆☆☆☆ 
天然うなぎカスリ
主に九州「柳川」」にいた、緑の背中に星のように斑紋が浮き出ていたそうですが、柳川地方ではすでに絶滅したようです。 
画像では判りにくいのですがカスリは粟粒ぐらいの白い模様が一面にあります。


<ホシ>
昨年捕獲された幻と言っても過言ではないホシです。それも3匹、恐らく生息環境でこのような模様がでるものとおもわれます。
獲れたのは西日本の汽水域です。


「サジ」 ☆☆☆ 
<天然うなぎサジ>
岡山産 腹の白や黄色の部分の境目がはっきりと区切られたウナギです「クロ」に多いのですが、アオにも見られます。


「スジ」 ★★★~★★★★
天然うなぎスジ
岡山産 「サジ」の中で境目の所にくっきりと黄色い線が入ったウナギで、季節により脂ののり方でこの黄色が消えたり現れたりすると考えられていますが、会員の感想として、あまり脂と黄色は関係が無いように感じます。

「ギン」「クダリ」 ☆☆~☆☆☆☆
天然うなぎクダリ
銀色や銅色の金属色のウナギは「ギン」とも呼ばれ下りウナギの別名です。 
産卵する前の「銀化」の特徴が顕著に現れ、腹の部分が金属色の綸子模様があります。
また胸鰭は黒色となるため、居付きの大型のウナギとは簡単に区別できます。 
大型の物は皮は硬いですが、脂が乗っていて臭みが無く人気が高いウナギです。
一部の地域では一年中綸子模様のあるうなぎが釣れますので、胸鰭と併せて判別した方が良さそうです。


《形による区別》 
「クチボソ」「トビ」 ☆☆☆☆
頭が小さい「狭頭形」でその中でも特に口が小さく、肥満度が高いウナギです。
柔らかいエサを豊富に摂取できる環境で育ったうなぎと考えています。
昔(平成初期まで)は全国各地で捕れましたが、環境の悪化で激減し、滅多に釣れなくなりました。
一部の地域では多く混じることもありますが、ここでは紹介しません。
<真ん中がクチボソです>※因みに左から順に九州・東北・近畿です。 下の画像は肝の色の比較、並び順は左と同じ。 食性の違いが肝の色にも現れています。 クチボソはメタボ気味ですね。



「トビ」とは、もともと養鰻の成育優良の物を示す呼び方ですが、いつのまにか天然にも使われるようになりました。
確認できた「トビ」は全て「クチボソ」でしたので同じかもしれません。
また、「アオ」の中で「とびきり良い物」=「トビ」という説が正しいかもしれません。
ですのでその場合い、「アオ」の最上級に位置します。


「カニクイ」×
天然うなぎカニクイ
下側が「カニクイ」です下側が「カニクイ」です

「クチボソ」「トビ」と正反対のウナギで頭が異常に大きく脂がまったく無く成長不良のウナギです。
こればかりは市場で値がつかなかったウナギです。
(方言で、オオウナギの事や単なる「広頭形」のウナギを言う所も多いので注意してください)

《生息場所などによる区別》

ウミウナギ(海うなぎ) ☆☆☆☆
一年中、海水に居るうなぎです。
うなぎの色は保護色となっているので、捕れた場所によって大きく変わるのですが、この海ウナギ特有のエメラルドグリーン系や瑠璃色に近い宝石に似た輝きは、数時間で無くなる為に、自宅に持ち帰った段階ではすでに変色してますので判断はできません。  

捕れて数時間後には色は下の画像のように黒ずんでしまいます。
*捕れた直後は腹は真っ白でした。 数日養生すると薄い緑になります。


オキアガリ(沖あがり) ☆☆☆☆
主に秋~冬は水温の高い海水で餌を食べ、梅雨頃に川へと移動するウナギの事です。
梅雨以降の下流域では、このオキアガリとイツキとが同じ場所で同時に釣れますが、まったく違った味です。
画像はありません。<(_ _)>
逆の大雨の後や梅雨の時期に湾内などで川のウナギがよく捕れますが、これらのウナギは「川のウナギだ」ぐらいでしか呼ばれず「オキアガリ」のような呼び名のない事を考えると、昔から「美味しいウナギ」として認知されていたのでしょう。

イツキ・ジツキ(居付き・地付き) ★~★★★
何年もその場所に居付いたうなぎは大型となります。
皮は硬いですが、環境の良い場所で育ったうなぎの身の質は上質です。


カワウナギ(川うなぎ) ☆☆~☆☆☆☆
上流域や清流で釣れるうなぎは、うなぎの語源「ムナギ」(胸黄)とも呼ばれている通り、腹は黄色くなります。
淡水域特有の香りがあり、通には好まれます。
貴重な黄金うなぎと呼ばれるうなぎ


《変わり種ウナギ》
白子(アルビノ) 
天然うなぎアルビノ
眼が赤いのが白子の特徴ですが、なぜか確認できたものはすべて、尾鰭の黒い色素が残っています


白変種
天然うなぎ白変種
これは、一見アルビノのようですが、目が黒ですので、突然変異の白変種ということになります。


パンダ?
天然うなぎパンダ
白子同様に天然界では外敵に一番先に狙われますので、なかなか釣れる事はありません。


トラ?
天然うなぎトラ
オオウナギの模様かと思いましたが普通の日本ウナギでした


《その他の種類(アンギラジャポニカ以外》
「タッシー」 ☆☆~☆☆☆☆

上の画像は2004年の6月に日本海某所においてトモエ兄が釣り上げた107センチです。
この1年前にやはり私がこれよりも大きいのを釣り上げているのですが、スカリを伸ばされて脱走され、画像はありません。
巨大さもさることながら、クチボソとは対極にある発達した頭部や胸鰭の位置も普通の鰻とは明らかに違います。
現時点でこいつらの正体が未だに解らないため、<その他の種類>に分類しました。
今後新たなことが判明すれば順次加筆修正していきたいと思います。


オオウナギ ×~☆☆
ニホンウナギではなくオオウナギです(学名・アンギーラ・マルモラータ)
斑紋が出ていますので、大きくなれば区別がしやすいです。 味は小型(60cm前後までとの説あり)のうちはわりと美味しく食べられます。
方言では「ゴマウナギ」「カニクイ」などと呼ばれていますが、ジャポニカにも同じ呼称があり、混同されることがよくあります。
画像はぱらまたが2006年に奄美大島において、真昼間から人前を悠々と泳ぐオオウナギを発見!夜に置きバリを仕掛けて釣りあげました。


ヨーロッパうなぎ ☆☆☆
(学名・アンギーラ・アンギーラ)
尾鰭の黒色輪郭の有無で、簡単に見分けることが出来ます。
ヨーロッパうなぎは一時期(十年以上の昔)、稚魚(シラスウナギ)が輸入され各地へと放流されたため、まれに大型の居付きうなぎとして釣れることがあります。
ジャポニカとの一番の違いは、尾びれの輪郭でしょう。
ヨーロッパうなぎには黒色の輪郭がありません。
近年は絶滅危機種として、ワシントン条約で輸出(入)が禁止されたため、今後日本で見かけることは無くなるでしょう。
しかし2008年にヨーロッパうなぎ?と思われる若魚が、和歌山県にて釣り上げられました。

ヨーロッパうなぎの自然回帰か?と沸き立ちましたが、DNA鑑定までしておらず、色素変異かどうかわかっていません。
下の画像は2003年にぱらまたが日本海側で釣り上げたもので、専門家によって「完璧なヨーロッパ」とお墨付きをいただきました。



















  

Posted by うな研管理人 at 22:27うなぎ雑学