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ウナギ激減に無自覚な加害者・日本人

2014年04月08日


ウナギ激減に無自覚な加害者・日本人


2012年08月22日と古いのですが、

ウェッジに

漁業 「環境の変化」という魔法の呪文

ウナギ激減に無自覚な加害者・日本人
〜あたかも被害者であるような誤解〜



というコラムがあります。

http://wedge.ismedia.jp/articles/-/2152?page=1

日本のウナギ問題を考えるうえでベースとして知っておいた方がいい、本質的なことが書いてあります。


著者は、マルハニチロ水産の海外買い付け担当だという片野歩さん。

著書の『魚はどこに消えた?』(ウェッジ)を、ボクも持っています。


ウナギ激減に無自覚な加害者・日本人

ウナギのことは少ししか出てきませんが、

世界の水産立国の中で、いかに日本の水産資源保護策(水産行政)が遅れているか、とてもよく分かる内容です。お勧めですよ。



以下にコラムの一部を抜粋します。

ぶんや

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ウナギは幻の魚となってしまうのか

 土用の丑の日を前後して、今年もウナギが話題に上りました。稚魚の価格が1キロ200万円(!)を超えて暴騰、ウナギの高騰で苦労する専門店、マダガスカルやインドネシア等からの新たな輸入先の発掘……。「ウナギの稚魚不漁」で消費者を含めて多くの人々が影響を受け、次はどこから輸入するのかとい うことに期待が集まるような報道となりました。

 このままでは、来年以降はさらに稚魚の数が減り、ウナギは幻の魚となっていくことでしょう。稚魚が減った最大の理由は環境の変化等ではなく、乱獲が主因です。それがあたかも、環境変化にも原因があったのではないかと「魔法の呪文」を唱えることで原因が曖昧にされてしまい、加害者である我々日本人があたかも被害者であるかのような、大きな誤解を与えることになってしまっているのです。

 EUは、ウナギの資源減少を懸念して2007年に輸出規制を行い、米国も規制の準備に入っているといわれています。「ウナギ取引、米が規制検討、 対象拡大なら日本に影響」という記事を見て、それなら規制される前に「ウナギを食べておこう」とするような考えがあるとしたら、それは如何なものかと思います。なぜ規制がかかるのか、真剣に考えていただきたいところです。

 欧米が規制をかける理由は、資源保護・持続性に関する考え以外の何ものでもありません。EUのウナギ資源は、規制実施後もまだ回復の兆しが出ていません。あまりに乱獲が進んでしまうと、資源の回復までに10年単位のスパンで長い年月がかかってしまうのです。それでも、将来のことを考えて規制を実施する国々と、問題を先送りして何の判断も下さない国とでは、結果の違いは言うまでもありません。

EUの資源管理の想いは伝わらず

 日本のウナギ養殖に年間で必要な稚魚は20トンといわれています。国内での水揚げは、ピークの1963年には約230トン獲れていたものが、今では10トンを割ってしまっています。足りない分は、輸入となりますが、密漁や密輸が横行するとされる稚魚の輸入は、大半が香港経由で、本当の出荷元はわからないケースが多いそうです。

 EUのマリア・ダナマキ海事・漁業大臣が7月に来日し、日本政府と水産基本政策、水産資源の国際的管理、違反漁業対策等について意見交換を行い、 国際資源管理の推進と違反漁業対策の強化に向けた日本・EU間の協力を盛り込んだIUU(違法・無報告・無規制)漁業問題への取り組みに関する共同声明に署名しています。本来であればウナギの稚魚などは、真っ先に具体的な魚種として話題になってもよさそうです。

 しかし、「中国で養殖されているウナギにEUからの密輸の稚魚が入っていないのか?」「その親ウナギを日本は輸入していないのか?」といったことは話題にならず。世界各国で新たなウナギを探し回る勇姿の姿が報道されているのを見ると、EU側の資源管理にかかわる主旨とその想いは伝わっていないな、 とつくづく考えさせられてしまいます。

 EUは2010年から、輸入の際に正当に漁獲されたものであることを、漁船の旗国が証明する「漁獲証明書」を要求しています。資源管理がされていないような水産物は、輸入できなくなり、市場から弾き飛ばされるのです。

 日本でも一部の魚種(メロ等)で漁獲証明が必要になってきていますが、これは例外に過ぎません。本来であれば、来年3月に開かれるワシントン条約 の対象にウナギ(ただし、これはアメリカウナギという品種で、日本で漁獲されるものと異なる)が浮上する前に、日本も正規ルートであることが証明されない 場合は、そのウナギ輸入の是非を考えるべきなのです。

ウナギ最大消費国・日本の責任

 今後は、まだ規制の緩いアフリカや東南アジア等の国々に、稚魚の漁が集中してしまうことでしょう。価格が高騰すればするほど、漁業者の数は増え、 漁獲圧力が増して、悪循環に陥っていくのです。背後にあるのは、最大消費国の日本です。米国やEUでは、資源管理ができていない水産物は、量販店やレストランで自主的に販売されなくなります。

 一方で、日本は、絶滅するまで売り続け「うなぎが減った、消えた」と大騒ぎするのです。EUの海事・漁業大臣が力説していたIUU排除に関して も、売り場で話題になるようなことは、ほとんどないのです。本来であれば、消費者に食べている魚の資源状態がわかるシステムがあることが望ましいでしょう。







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Posted by うな研管理人 at 08:49 │真面目な報道

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